公開研究会「ISO26000-ラギー・フレームワークと児童労働の関係性」 (2011.5.16)

2011516日(月)に日本財団会議室(東京)にて、公開研究会「ISO26000-ラギー・フレームワークと児童労働の関係性」を開催しました。

児童労働ネットワーク(CL-Net)運営委員の寺中誠(東京経済大学現代法学部 客員教授/(社)アムネスティ・インターナショナル日本 前事務局長)が講師を務め、企業と人権に関する国連文書であるラギー・フレームワークと児童労働の関係性について説明しました。

ラギー・フレームワークは、企業の人権・労働・環境との関わりについて定められたグローバル・コンパクトの遵守が企業の自主的な努力に委ねられており、法的拘束力がないことに危機感を覚えた前国連事務総長であるコフィ・アナン氏と米国人学者であるジョン・ラギー氏によって作成された文書です。国際標準化機関(ISO)によって制定された企業の社会的責任に関する規格であるISO26000に、企業の人権尊重責任や、児童労働禁止の規定を規定させるなど、大きな影響を与えたとされています。

このように企業の社会的責任に対して大きな影響を与えたラギー・フレームワークは、「人権保障における国家の義務と企業の責任に関する法的な枠組み」とされており、実際には保護・尊重・救済/補償の3つのパートから成り立っています。

① 保護・・・人権を保護するのは国家の義務である。それゆえ国家は、企業に国際人権法を守らせるべく、適宜企業活動に対して介入しなければならない。
② 尊重・・・人権を尊重するのは企業の責任である。企業にも国家と同等に責任を取る義務がある。CSR活動の実施やコンプライアンスの遵守によってカバーできているのは、企業の責任の一部でしかなく、企業は自らが「影響を及ぼす範囲」全てにおいて「相応の注意」をもって責任を取らなければならない。
③ 救済/補償・・・人権を救済するのは法的な枠組みである。国家や企業が自らの責任を果たすため、あるいはその監視をするために、司法的な手続きや裁判外の手続きを含め、法的な枠組みを整える必要がある。

企業の取るべき3つの社会的責任とは、従業員の人権(多くの企業が取り組む)、サプライチェーンの中の人権(狭義の社会的責任、少数の企業)、コミュニティの人権(広義の社会的責任、皆無)です。例えば、企業は、児童労働を禁止する法の遵守や児童労働で作られたものの調達の取りやめだけでは責任を果たしたとは言えず、児童労働が生まれてくるバックグラウンドに対しても責任を持たなければなりません。児童労働が存在するコミュニティからの調達を取りやめた結果、コミュニティが崩壊したのでは、企業は自らの責任を果たしたとはいえないのです。

ラギー・フレームワークと児童労働の関係については、特に「②尊重」のパートにおいて、児童労働自体も児童労働を生み出す環境についても企業は責任を負わなければならないとしているところに顕著に表れています。

参加してくださった方々は企業やNGO関係者が多く、みなさん真剣なまなざしで講師・寺中の話に聞き入られていました。寺中の話が一通り終わった後には、活発な質疑応答も繰り広げられ、みなさんの意識の高さが強く伝わってきました。

児童労働ネットワークでは、今後もこうした研究会の開催を予定しています。是非ご参加ください。

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