児童労働の撤廃に向けて-世界・国際機関-

1.責任・役割

国際機関は、基本的人権の確保・推進をその任務の主(重)要なものとして掲げています。例えば、児童労働に深くかかわっている国際労働機関(ILO)は労働に関する国際的基準の策定・推進が基本的任務ですし、ユニセフは子どもの権利確保が任務です。児童労働は、子どもが搾取されないこと、働かないこと、教育を受けることなどの権利の侵害です。まず第一には、条約を各国が批准して、児童労働撤廃の法的義務が課せられることが必要です。しかし、批准だけでは十分でなく、条約に違反せず、条約どおりの内容が実現されなければいけません。もう一つの大きな任務は、人々の生活向上を図るための国際協力の推進です。国連を中心とする国際社会は、「ミレニアム開発目標」(MDGs)を2000年に定め、2015年までの目標達成に、努力しています。児童労働は、MDGsで明確には触れられていませんが、貧困削減、普遍的初等教育の達成の二つの目標に深くかかわると理解されています。近年では、国際課題の中で、児童労働の関心が高まっています。児童労働・その課題が子どもの権利に関する国連総会決議にも盛り込まれています。

2.活動

大別して、1.児童労働についての調査研究、2.国際基準・ガイドラインの策定・推進、3.アドボカシー・キャンペーン、4.現地での児童労働撤廃のための取り組み、が行われています。

1.は、代表的なものとして、ILO、ユニセフ、世界銀行の三機関が共同で行っている「子どもの仕事を理解すること」調査研究プロジェクトがあります。このプロジェクトでは、調査研究の最大の課題はデーター欠如と指摘していますが、世界各地の児童労働の現状分析を「迅速評価」という形で発表しています。また、ILOは、国別児童労働調査の実施や最悪の形態の児童労働の推計などの統計的データー収集を世界各地で行っています。

2.については、ILOが第138号条約(就業の最低年齢)及び第182号条約(最悪の形態の児童労働)、国連・ユニセフが「子どもの権利条約」の批准奨励・効果的な実施や監視をしています。98年にはILOで「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」が採択され、児童労働の撤廃は仕事に関わる基本的人権と再確認され、各国はたとえ条約を批准していなくてもこれら原則を遵守する義務があります。国連は、99年、特に多国籍企業の社会的責任の国際照準として「グローバル・コンパクト」(人権、労働基準、環境、腐敗防止に関する10原則)をスタートさせました。ILO児童労働2条約は、この中の2原則を構成しています。ILOは、2016年までの最悪の形態の児童労働撤廃を目標に掲げています。国際機関以外に、労働者、使用者の世界的ガイドライン作りの例を記します。ILO宣言にある原則実現のために、国際労働組合組織と多国籍企業の間での「グローバル枠組み協定」(企業の行動規範に関する労使協定)があります。1988年最初の交渉が行われて以来2010年2月現在で70協定(うち56は2002年校以降締結)あります。さらに、世界的な産業界の取組として、子どもの性的搾取防止のための旅行・観光業界行動倫理規範(コード・オブ・コンダクト)があります。

3.については、ILOは毎年6月12日を児童労働反対世界デーと定めており、世界中で集中的な広報・啓発活動が行われています。また、ILOは、4年に一度児童労働に関して、現状・進展、政策・取り組み、今後の展望などの世界的俯瞰を提供する「グローバル・レポート」を発表しています。

4.については、ILOの「国際児童労働撤廃計画」(IPEC)が代表的なものです。2006年に策定された(2010年11月新計画策定予定)グローバル行動計画を実施しています。IPECは、2008?09年、世界の92か国で活動し、107億ドル(約120億円)の資金が使われました。児童労働撤廃期限付きプログラム(TBP)(世界23カ国で実施)、教育を通じての児童労働撤廃など様々なプロジェクトを実施しています。特に最近のトピックとしては、1)危険な児童労働、2)子どもの人身売買、3)家事使用人、4)武力紛争下の子ども、5)グローバル金融危機への対応、6)国際的パートーナーシップ、があります。アフリカが重点地域で、南南協力なども推し進めています。

3.特徴及びタセクターとの連携

児童労働は、規範活動と実際活動がうまく結びついた典型的テーマです。国際機関の特徴は、世界全体の基準やガイドラインを策定し、推進するという世界的・普遍的な枠組みを作成することです。世界各国は、そうした基準・ガイドラインを遵守することを求められていますが、世界全体を一律の方法によって実施するのではなく、それぞれの状況に対応した実施が効果的と理解されています。世界全体を観察・監視する位置にいる国際機関は、世界での「好事例」を提示し、各国にその模倣をうながすことができますので、目標に向けての大きな推進力となっています。

IPECへの資金集中によって相対的に効率的な実施が図られていますが、2010?11年予算は、競争入札制度の影響で2008?09年に比べ実質30%減になっています。世界的課題に取り組む資金源の確保は、国際機関にとって大きな課題といえます。

児童労働問題は複雑な要因が絡み合っていますので、特に、関係国際機関、さらにはNGOなどのパートーナーシップが推進され、例えば、ILO、ユネスコ、ユニセフ、国連開発計画(UNDP)、世界銀行、教育インターナショナル、グローバル・マーチがメンバーの「児童労働及び万人のための教育(EFA)」タスクフォースも2005年に設置されています。2で述べたように、ILO、ユニセフ、世界銀行三機関共同の調査研究があります。さらに、国レベルでは、「ワン・UN(国連は一つ)」として、全国連機関の連携・調整が進められています。

4.日本の取り組み

日本は、上記2に述べたILO2条約、国連条約を批准しています。従って、条約を実施する法的義務があります。関係する主要国内法として、労働基準法、児童買春・ポルノ禁止法などがあります。日本国内での児童労働として、人身売買、買春など最悪の形態が、特に課題といえます。人身売買(取引)については、日本政府は、2004年に行動計画を策定(09年改定)しています。日本経済団体連合会(日本経団連)は、2004年改定した企業行動憲章で、児童労働を基本的人権の侵害として、児童労働を行わないように、関連会社も含め、徹底をはかるよう謳っています。日本でも児童労働は企業の社会的責任(CSR)の一課題であるとのの認識が、徐々にではありますが、進みつつあるといえます。日本労働組合総連合会(連合)は、98年から児童労働に関するILOプロジェクトへの財政支援を行っています。児童労働撤廃活動への政府開発援助(ODA)拠出は、欧米先進国に比べ極めて低調ですが、最近では、国連人間安全保障基金を通じて、アジアの人身売買防止や被害者支援、アフリカへの児童労働予防取組みへの財政支援を行っています。日本は、多くの物品を海外で生産したり、輸入をしています。サプライチェーンを含めての児童労働を使用されないよう、企業及び消費者の行動が重要です。グローバル・コンパクトには、106企業・大学・団体が加盟しています(2010年6月末)。また、グローバル枠組み協定には、高島屋労使が唯一締結しています。(2010年7月23日)