児童労働の撤廃に向けて?消費者・市民?

1. 責任・役割

先進国で購買力を持つ消費者として、私たちの行動は途上国の児童労働の問題に深くつながっています。

児童労働の主因として、大人に十分な仕事がなく生活のために子どもが働かざるをえないこと、そして農業や製造業の現場で生産コストを押さえるため、事業主が大人より安価な労働力として子どもの労働力を求める状況があります。消費者が安さのみを求め、生産の背景を確認せずに商品を購買することにより、サプライチェーンの末端では子どもが安さのしわ寄せを受けることにつながっているのです。消費者は自分の買う商品の生産背景にもっと目を向け、児童労働をはじめとする生産者の搾取のもとで作られていないことをメーカーや販売業者に求めることで、児童労働の撤廃に大きな役割を果たすことができます。

2. 活動(現状)

1990年代、大企業の下請け工場で児童労働が使われていたことが発覚し、欧米諸国では市民のボイコット運動が盛んになりました。それを受け、1990年代の終わりから、米国の「SA8000」やイギリスの「エシカル・トレーディング・イニシアティブ(ETI)」など児童労働の撤廃を盛り込んだ企業の行動規範や労働規格が定められ、その遵守を標榜する企業が増えています。さらに欧米では、途上国の立場の弱い生産者に公正な賃金の仕事の機会を作り出す、「フェアトレード」の商品を選ぶ消費者も増え、市民や自治体が積極的にフェアトレードを支援する「フェアトレード・タウン運動」も盛んです。

3. 特徴、課題、他のセクターとの連携

消費者、市民として、児童労働を禁止する行動規範を実行する企業を応援することは、児童労働を撤廃する上で大きな力となります。企業は消費者の要望・行動に敏感なため、生産の背景や行動規範について問い合わせたり、意見を届けることで児童労働を使わない製品調達を企業に促すことができます。

またヨーロッパではEU議会がフェアトレード支援を表明する、イギリス政府がフェアトレード普及に巨額の予算を投じるなど、行政の取り組みやNGOの盛んなアドボカシー活動が消費者の意識に影響を与えています。日本でも広く市民に児童労働の問題をアピールするためには、NGOと企業、行政の連動による後押しも必要となります。

4. 日本での取り組み

日本でも消費者・市民が児童労働問題に対してできる行動はたくさんあります。その一つは児童労働に反対するNGOなどの活動を支援することです。児童労働ネットワーク本体や参加NGOを応援することで、児童労働問題の啓発活動や現地の状況改善を支援することにつながります。

もうひとつの方法は、フェアトレード商品のように、公正な賃金が払われているなどの生産背景がわかる商品を選ぶことです。日本でのフェアトレードの認知度はチョコレボ実行委員会による調査(2008年)で17.6%と、70%以上の消費者が認識しているイギリス、ヨーロッパ諸国とまだ大きな差があります。自分で選ぶことに加え、フェアトレードをまわりの人に広めていくことも重要です。フェアトレードの考え方が広まれば、他の商品を購入するときにも生産者の状況や児童労働が使われていないか、などに意識が向きます。

さらに企業が児童労働を使わない調達を実現するよう働きかけたり、住民として行政へ意見を届けることもできます。2010年現在、名古屋、札幌、熊本など日本各地の市民が行政を巻き込んで自治体を「フェアトレード・タウン」とする取り組みなども行われています。