児童労働の撤廃に向けて〜NGO〜

1.責任・役割

NGOは主にプロジェクト実施、政策提言の2つの責任があります。

現地で実際に児童労働を撤廃するためのプロジェクトの実施を担う責任です。国際機関や政府のプログラムであっても、実際は現地のNGOが実施主体となって、子どもたちの救出、保護、リハビリテーション、教育への統合、子どもの親や雇い主、地域住民への働きかけなど様々な取り組みを行っています。

一方で、児童労働撤廃を進めるためには、政府がそのような政策を策定し予算等実施体制を確保したり、条約を批准しそれにあわせた国内法を整備し児童労働の禁止を法的に担保することなどが求められます。そのような政府の責任が果たされているかをチェックし、提言を行う役割をNGOは担うことが求められています。

そのほかNGOが担うべき役割として重要なのは、企業、労働組合、国際機関など他セクターと連携し、現場の状況を把握しているNGOならではの情報や視点をそれぞれの活動に反映させていくことです。他セクターとのパートナーシップによりNGOだけではできない動きをつくることができます。

また、キャンペーンやメディア、SNSでの情報提供などを通じて一般市民や様々なステイクホルダーへの意識啓発を行うこと、市民を活動に巻き込み、遠い世界の出来事ではなく自分ごととして児童労働の問題を考えてもらうようにすることもNGOの大事な役割です。

2.活動(現状)

児童労働撤廃に向けてNGOが実施している活動は多岐にわたり、対象別に分けると以下のようなものがあります。

  • ◎子どもに対して
    児童労働をさせられている子どもたちの救出、保護、リハビリテーション、教育への統合、子どもたち自身による活動の支援など
  • ◎子どもの周囲の人々に対して
    子どもを働きに出す親や子どもを雇用する雇い主、学校、警察、地域住民などへの意識啓発やトレーニング、子どもが児童労働に陥らないための予防的活動
  • ◎政府に対して
    政府が児童労働をなくすために果たすべき責任(政策の策定や予算等実施体制の確保、条約を批准しそれにあわせた国内法を整備するなど)を果たしているかのチェック、政府機関との対話や署名活動などを通じた政策提言
  • ◎一般市民に対して
    情報提供やセミナー開催などを通じた市民への教育・啓発活動の実施
  • ◎企業に対して
    企業のサプライチェーンにおける人権保護に関する第三者監査の実施や認証の提供
    企業のサプライチェーン管理や児童労働撤廃に向けた取り組みへのアドバイス提供
  • ◎すべての活動の基礎となる調査・研究
    これらの活動を行うためには、児童労働の現状を把握するための調査・研究も重要です。
    さまざまなNGOが独自に、または他団体や他セクターと協力して調査報告書などを作成しています。
  • ◎ネットワーキング
    NGO単体でなく目的を同じくする団体のネットワークやプラットフォームをつくり、共同で政策提言やキャンペーンを行うことは大きな力になります。
    児童労働に取り組む非営利組織の世界的ネットワークに、「児童労働に反対するグローバルマーチ」があります。このグローバルマーチにはNGOのみならず労働組合や教職員組合など、児童労働を終わらせるという共通の目的を持つ市民社会組織が、140か国以上の国から約2000団体メンバーとして加わり、各地での児童労働に反対するマーチの実施や、政策提言などを行っています。

3.特長、課題、他のセクターとの連携

NGOの特長は、きめ細やかな、一人一人の子どものニーズに合った活動ができることです。例えば、人身売買の被害にあった子どもを救出する場合には、その子どもを保護し、カウンセリングを行い、家族を探し、家族に統合し、その後また子どもが働かないようにフォローアップを行うなど、NGOだからこそできるきめ細やかな対応をしています。

そのような一人一人への対応が出来る一方で、課題は、プロジェクトのスケールアップです。成功例としてあげられるケースも、それをスケールアップするための資金が確保できなかったりします。

また、特に政策提言を行うための資金の確保は大変難しいものがあります。先進国のNGOだけでなく、現地のNGOと連携し、また現地でもアドボカシー活動を通じて児童労働撤廃の活動推進をあらゆる角度からしていく必要があります。

近年、企業による人権デュー・ディリジェンスの実施の重要性がますます強調される中、サプライチェーン上の児童労働の有無のモニタリングや、サプライヤー行動規範の整備などに専門性をもつNGOが協力するケースも増えてきています。

4.日本での取り組み

児童労働白書2020~ビジネスと児童労働』デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 株式会社オウルズコンサルティンググループ 認定NPO法人 ACE、2019年12月発行(2024年1月 一部修正)の巻末には、児童労働に取り組む日本のNGO・NPOとして15団体のリストが掲載されており、その活動分野は教育、アドボカシー、フェアトレード、緊急救援など多岐にわたっています。地域的にもアジア、アフリカ、中南米などさまざまな地域で取り組みが行われています。一方で、企業とパートナーシップを組み、人権デュー・ディリジェンス実施のためのアドバイスや協働を行う団体はまだ多くはありません。

児童労働ネットワーク(CL-Net)では、現在、NGOと労働組合、合わせて17団体がメンバーとなっており、毎年6月の児童労働撤廃デーには共同でレッドカード・アクションなどのキャンペーンを行っています。