1. 責任・役割
労働組合は労働者を代表する組織であり、民主的な職場と全ての労働者にとってのディーセントワークを実現することを目標として、使用者や政府(国・自治体)と交渉する役割を担います。
児童労働は大人に代わる安価な労働力として搾取を目的に導入されますが、こうした賃金のダンピングと大人の失業が貧困の度合を深め、更なる児童労働を引き起こす元凶となります。こうした負のサイクルを断ち切るために、国際労働機関(ILO)をはじめとしたグローバルレベルのみならず、国や地域レベルでも、政労使による児童労働撤廃に向けた政策策定を行う役割を担います。また、先進国においては、労使協議・交渉を通じて、児童労働が使用されていない原材料・製品の調達を確立することで、企業の社会的責任(CSR)を推進する責務を負います。児童労働が存在する国では、地域コミュニティー、NGO、及び地元の労働組合と連携した、児童労働/貧困撤廃プロジェクトも行います。
2. 活動(現状)
政策策定においては、ILOの場に政労使の一当事者として、各国のナショナルセンター(日本では連合)や、国際労働組合総連合(ITUC)、国際産別組織(GUFs)が参加しています。児童労働撤廃のための重要な国際条約であるILO第138号条約(最低就労年齢)や第182号条約(最悪の携帯の児童労働)は、こうした政労使の三者構成機関で採択されたものです。また、児童買春を排除した倫理的観光の推進を目的とした協議が、GUF組織である国際運輸労連(ITF)や国際食品労連(IUF)が参加する世界観光機関(UNWTO)の場で行われています。
CSR推進にむけた労使協議・交渉は、ナショナルセンターと使用者団体、産業別組合組織と業界団体、企業別労働組合と個別企業の経営と行われています。
地域コミュニティーを対象とした現地プロジェクトは、地域の組合のイニシアティブで行われているものもありますし、IUFが業界団体や関連企業と協力して設立した財団、「タバコ栽培における児童労働撲滅財団(ECLT)」や「国際カカオ・イニシアティブ(ICI)」などが実施するものもあります。
3. 特徴、課題、他のセクターとの連携
労働組合は上述の通り、労働者を代表する組織であるため、組織労働者がいる職場では強みを発揮する反面、児童労働が蔓延する未組織職場では充分な力を発揮するのは困難です。このため、この分野で強みを持ったNGOや地域コミュニティーとの連携が必要となります。
一方で、労働者は消費者であると共に一般の市民でもあることから、意識啓発を行う場合や、署名活動のような動員を必要とする場合には、そのメンバーシップを有効に活用し得る強みを持っています。
このように、政策策定やCSRの推進において、政府や使用者との協議・交渉を行います。また、意識啓発活動や現地プロジェクトの実施においては、地域コミュニティー、NGO、及び地元の労働組合と連携します。
4. 日本での取り組み
日本においては、児童ポルノや援助交際などの児童の性的搾取が指摘されてはいますが、職場における児童労働の事例が直接的な問題として存在する訳ではないので、組合員に対する意識啓発や、労使協議・交渉によるCSRの推進が中心的な取り組みとなっています。
意識啓発活動は、児童労働ネットワーク(CL-Net)やNGO-労働組合国際協働フォーラムを通じて、NGOとの連携の中で実施しています。また、NTT労組のように、独自にスタディー・ツアーやイベントを通じた啓発活動を実施している組合もあります。 CSRの推進においては、個別企業の労使協議・交渉が中心的な実践の場となっています。また、フード連合の菓子部会は、日本チョコレート・ココア協会との年1回の懇談会の場で、毎年カカオ栽培における児童労働問題を取り上げ、協会としての取り組みを要請しています。