「2021年児童労働撤廃国際年ステークホルダー会議 〜みんなでアクション〜」を開催しました

2021.06.02報告

活動報告
2021年 児童労働撤廃国際年ステークホルダー会議 〜みんなでアクション〜

日時: 2021年3月17日(水)17:00〜18:30
会場: 参議院議員会館1階 講堂 および オンライン配信
主催: 児童労働ネットワーク
後援: ILO活動推進議員連盟、ユニセフ議員連盟
協力: ILO駐日事務所、ユニセフ東京事務所、教育協力NGOネットワーク(JNNE)

児童労働ネットワークは、2021年3月17日に「2021年児童労働撤廃国際年ステークホルダー会議」を開催しました。コロナ禍によって世界中で児童労働の増加が懸念されるなか、SDG 8.7に掲げられた「2025年までの児童労働撤廃」達成に向けて進展の加速化を図るために、ステークホルダーが集まり、「児童労働撤廃国際年」におけるアクションや連携の可能性を考える場となりました。

031_eventimage7.jpg

■開会あいさつ

◆児童労働ネットワーク 代表 堀内 光子
本日は、お忙しいなか、ご参加いただきましてありがとうございます。
今年は児童労働撤廃国際年です。児童労働撤廃に向けてよりいっそう活動を進めたいということで、児童労働ネットワークは、本日のセミナーを開催しております。ステークホルダーとして一緒に活動をしていただきたい方々にお集りいただき、誠にありがとうございます。ご協力をよろしくお願いします。
児童労働撤廃はSDGsの目標のひとつにもなっています。現在1億5200万人いる児童労働の撤廃をめざす2025年まで、あと5年足らずしかありません。コロナの影響により児童労働がより増えているという情報もありますので、2025年までに世界の児童労働をなくすためには、よりいっそうの努力が必要です。
本日は、皆様のご協力で、世界から児童労働をなくしていくための道筋ができればと思っています。どうぞよろしくお願いします。

◆ILO活動推進議員連盟 事務局長 石橋 通宏 参議院議員
ILO活動推進議員連盟は超党派の国会議員で構成されています。事務局長として、ひとことごあいさつします。
児童労働撤廃国際年に、より多くの方々に児童労働の運動を知り、参画いただき、力を合わせて日本のみならず世界から児童労働をなくしていく大きな展開運動の1年にしていこうということで、ILO議連は、全面的に賛同、賛成し、本日のセミナーを後援しています。
私は、30年近く児童労働問題に関わってきました。ILO時代には、ILO第182号条約「最悪の形態の児童労働条約」について、労働側の代表としてILO総会で直接議論に参加しました。その立場からも、世界で1億5000万人以上の子どもが働いており、そのうち7000万人以上は最悪の形態の児童労働であり、そのなかには先進国、この日本にも、最悪の形態も含め児童労働が存在します。
このことを国会議員や多くの皆さんに改めて共有し、日本でもILO第182号条約に書かれています「国内行動計画」の策定に向けて、ILO議連として厚生労働省をはじめ政府の皆さん、ユニセフ議員連盟と連携して対応していきたいと思っています。
今日のステークホルダー会議が、今後の展開のための第一歩として、皆さんと確認させていただき合う場となるように役割を果たせればと思っています。今後とも、共にアクションをお願いします。

◆ユニセフ議員連盟 事務局長 牧島 かれん 衆議院議員
本日のセミナーを後援していますユニセフ議員連盟の野田聖子会長のもと事務局長を務めています。
ユニセフ議連は、子どもたちを取り巻く環境の変化について国内外を問わずヒアリングをし、状況把握をし、政府と共にアクションを起こしていかなければならないという指針のもとに活動しています。子どもたちが夢を叶えることができるような社会、世界をつくっていきたいと思います。
コロナにより子どもたちを取り巻く環境がいつも以上に悪化していると受け止めざるを得ません。医療へのアクセスが限定的となり、閉校によってサービスや情報へのアクセスができないことによって取り残され、子どもたちの間での格差が生じています。これは是正していく必要があります。
ILOとユニセフの共同報告書(2020年6月)では、貧困が15%上昇する見込みと報告されており、何百万人という子どもが働かざるを得ない危機的状況です。貧困が1%上昇すると児童労働は少なくとも0.7%増加すると言われていることから、貧困問題と児童労働問題は同時に考えていく必要があります。
ユニセフでは各国政府、国連組織、人道支援団体と連携しています。フィジカルだけでなくメンタルの健康、栄養を含めた成長が大きなテーマになっており、日本は栄養サミットを開催すべく準備中です。こうしたさまざまなアプローチから1年間学校に通えていない学齢期の子どもたち、1億6800万人以上を救っていきたいと思います。学校に行っていないと、子どもは労働、搾取、暴力の対象になりがちです。
2025年までの児童労働撤廃に向けて、児童労働撤廃国際年の"Act"、 "Inspire"、 "Scale up"という3つのキーワードを今日のイベントで確認したいと思います。教育や社会保障など多方面からの支援、子どもへの投資を優先、子どもの利益 (best interest of the child)を考え、これらへの応援団を増やしていきたいと思います。日本政府には、国内外の実態の把握、行動計画の策定、Alliance 8.7への参加、ODAを通じた児童労働撤廃、児童への資金を増やしていくことを働きかけていきたいと思います。
コロナ禍の子どもたちが失われた世代にならないように、守り抜いていかなければなりません。皆さんと一緒にアクションつなげていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

■「児童労働撤廃国際年」とコロナ禍の子どもたちへの影響

◆ILO駐日事務所 代表 高崎 真一(※崎はたつさき) 氏
児童労働と関連する国際基準としては、ILO第138号条約(最低年齢条約)と第182号条約(最悪の形態の児童労働条約)があります。児童労働とは、「15歳未満の子どもが行う労働、あるいは18歳未満が行う危険な労働」と定義されています。児童労働は、子どもたちにさまざまな点で害を与えるだけでなく、教育機会が失われ、最悪な場合には子どもが奴隷にされる、家族から引き離される、深刻な危険や病気になる、という恐れがあります。児童労働の要因には、親が働けない、国の教育や社会的保護制度が弱い、おとなが子どもの脆弱さを利用するなど、が挙げられます。
児童労働はコロナの前までは2016年まで減少傾向にあり、20年間で約1億人が児童労働から解放され、38%減少しました。しかし、その時点で1億5200万人が児童労働に従事し、約半数が危険有害に従事し、大部分はアフリカ地域とアジア・太平洋地域にいました。就業している産業は、農業、サービス業、工業分野が多くなります。
児童労働撤廃国際年は2019年の国連総会で採択され、取り組みを加速させ、さらに前進をめざしていこうとなりました。ILOも加わって発足したAlliance 8.7は、グローバルなパートナーシップを活用し、2025年までにあらゆる形態の児童労働の撤廃(SDG 8.7)をめざしています。行動(Act)、啓発(Inspire)、スケールの拡大(Scale up)の3つの柱の下、ILOは国際年の活動を主導しています。
しかし、コロナが状況を一変させました。ILOとユニセフによる2020年の報告書では、コロナの影響によって生活水準が低下し、児童労働が増加傾向にあると懸念されています。世界の労働時間は8.8%減少し、労働所得は世界のGDPの4.4%の減少、世界人口の55%は社会的保護制度を受けていません。多くの家庭で、収入の減少、教育の崩壊、家族の病気などによって、子どもたちがより困難な環境や、より長時間労働を強いられるリスクが高まっています。最新の児童労働の推計は2021年6月に発表を予定しています。
危機に際して、インフォーマル労働者や移民労働者など最も脆弱な人びとへの支援と社会的保護の拡充が強く求められています。官民のパートナーシップにより、企業がサプライチェーンの監査を行うことも国の労働基準監督業務を補完するという意味で重要です。
実行性のある行動を問うということで、2021年に取り組む行動をアクション・プレッジとして示す、そして音楽やアートを通じて児童労働についての関心を促す活動が世界中で始まっています。ILO駐日事務所は、若い世代に関心をもってもらうために、大手音楽会社と協議してミュージック・キャンペーンを計画中です。詳細が決まり次第、さまざまなチャンネルで発信しますので、「いいね」のクリックをお願いします。
すべてのステークホルダーが取り組むことで影響力が高まります。ILO駐日事務所も全力で取り組んでまいりまので、ご協力よろしくお願いします。

◆ユニセフ東京事務所 所長代行 根本 巳欧 氏
かつてアフリカの現場で働いていた経験を共有したいと思います。初めての赴任地はシエラレオネで、2004年、内戦後の復興の時期でした。子どもの保護担当として赴任し、児童労働もプロジェクトのひとつでした。路上で働き生活している子どもの数を把握するために、真夜中に道に立って定点観測をしていました。その時に、12歳くらいの女の子に会いました。家族から離れて首都で1人で、昼間は家政婦として働き、夜は体を売って生活していました。「どうして働いているの?」と聞くと、「パンが欲しかった」という返事でした。当時、20〜30円で大きなパンが買えました。
新型コロナウィルスの影響により、途上国での子どもの貧困は15%増加しています。貧困ライン以下の子どもが1億4000万人、つまり日本の全人口以上の子どもたちが貧困にあえいでいます。生活のために搾取されたり危険な労働を強要される子どもがいます。なかには、自分の体を売って生活する女の子も増えているのではないでしょうか。
ユニセフが重視しているのは、子どもたちを学校に戻すことです。一時的な休校が行われた130ヵ国以上で、10億人に影響を与えました。休校によって児童労働が増加している国も出ています。授業再開後に、経済的、心理的理由により子どもを学校に戻せない親も増えています。対策としては、学費の削減や一時停止、女子教育の推進、貧困世帯への給付などの政策を、ユニセフは各国で訴えかけています。特に、女子教育の重要性は今年6月にイギリスで開催予定のG7の主要な議題にもなる予定です。
新型ウィルスの脅威は、人間の安全保障への脅威でもあります。子どもたちの保護、エンパワーメント、生きていくためのスキルを身につけてもらうことが不可欠です。誰一人取り残さないというSDGsの原則にのっとり、子どもたちを復興・再生の中心と据えていかなければなりません。失われた世代を生まないように、劣悪な環境で働く子どもを少しでも減らすために、何ができるのか。本日の会議を経て皆さんと一緒に考えていければと思います。

■児童労働撤廃に関するNGOからの活動報告

◆児童労働ネットワーク 事務局長/特定非営利活動法人 ACE(エース) 代表 岩附 由香 氏
ACEは児童労働問題に取り組んでいる団体で、子どもを児童労働から救出し、教育を受けられるようにしています。これまでの活動から、児童労働はなくしていくことができるという確信と経験を積んできました。世界にたくさんの子どもたちがいるなか、どのように取り組みを強化していくのかが課題だと思っています。
コロナ禍で、ACEが支援しているインドの地域で子どもの状況を聞きました。学校が休みなので、子どもを働かせるという思考回路になりがちだったり、現金収入が減って困っている家庭がありました。そこで、支援が必要であるにもかかわらず行政の支援が行き届いていない家庭を特定して、食糧支援を行いました。まさに、弱者である子どもたちが、コロナ禍によって今まで以上に弱い立場に置かれています。
ガーナでは、カカオ生産地で地域展開型のプロジェクトを2009年から行っています。日本で作られているチョコレートの原料であるカカオの8割は、ガーナから来ているのです。ACEのプロジェクトの中心的な取り組みのひとつは、地域の中で児童労働が起きるとそれを解決できる、住民による児童労働モニタリングシステムの構築です。住民がボランティアで、行政の支援につなぐなど、児童労働をなくすための解決策を見いだすという持続可能な仕組みです。ひとつの村に対して3年ほど支援を行います。当初村の子どもたちの3分の1ほどが児童労働に従事していましたが、ほぼ全員が学校に行けるようになっています。ただし、村に新しく流入してくる人たちがいますので、ACEのプロジェクト終了後も、住民は継続して活動を行っています。このような仕組みづくりをガーナとインドで行っています。
これらのプロジェクトの資金は、市民の方々からのご寄付だけでなく、企業からも多くのご寄付をいただいています。児童労働をサプライチェーン上の問題として認識していただくように企業に働きかけています。いくつかの企業とのパートナーシップを組んで、ACEの支援地産のカカオを使ったチョコレートを作り、消費者がこれら商品を買って問題解決に参加できる支援の枠組みをつくってきました。児童労働問題の解決にはビジネスセクターの関りが重要だと思っており、ビジネスセクターをどう巻き込んでいくかが課題です。また、企業にとってはこのような取り組みがSDGs達成のためのひとつの方法なのではないでしょうか。
児童労働撤廃国際年3つのキーワードのひとつ「スケールアップ」の例として、チャイルドレーバー・フリー・ゾーンを提唱しています。もともとガーナ政府の計画にあった制度ですが、ACEとデロイトさんで文書化し、現在JICAの事業としての実現化に向けたパイロット活動をしています。住民参加のモニタリングシステムを普及し、是正措置が地域の中で働き児童労働がない地域が増え、将来的には児童労働を使用していないカカオには関税がかからないといったグローバルな枠組みへの発展などが、児童労働撤廃貢献のためのひとつの道だと思って活動しています。

◆特定非営利活動法人 テラ・ルネッサンス 理事/
大槌復興刺し子プロジェクト プロジェクト・マネージャー 吉田 真衣 氏
テラ・ルネッサンスは、すべての生命が安心して生活できる社会の実現をめざし、カンボジア、ラオス、ウガンダ、コンゴ、ブルンジ、日本の6カ国で活動しています。主に、地雷、子ども兵、小型武器といった紛争にまつわる社会課題の解決や日本で平和教育を行っています。
子ども兵は最悪の形態の児童労働にあたり、正規、非正規を問わずあらゆる軍隊に所属する18歳未満の子どものことを指します。2007年に、世界で少なくとも25〜30万人いると言われており、軍人全体の10%にあたります。ほとんどが非正規軍に使用されています。子ども兵は増えていると言われていますが、数は把握しにくいのが現状です。子ども兵の40%は少女で、彼女らは強制結婚や出産をさせられる状況にも置かれています。拉致や誘拐などの強制的徴募、あるいは自らの志願により、政府軍や武装組織の兵士になります。
活動をしているウガンダでは、1980年代後半から政府軍と反政府軍の内戦が行われており、特に1993年ごろから反政府勢力によって子どもが誘拐され、強制的に兵士にされる事例が増えました。その数は3万8千人で、残虐な行為に加担させられます。少女兵も多く、100%が性暴力の被害にあっています。強制結婚の対象となり、妊娠し出産する少女は98.5%にのぼります。このように幼くして子どもを育てる元少女兵の支援を優先的に行ってきました。
社会復帰支援として、脱走したり戦闘中に負傷して帰還した子どもたちは、基本的な教育を受けられず、収入を得る手段がなく、「元子ども兵」であると偏見や差別の対象となるという課題を抱えています。社会復帰に必要な能力の習得、経済的な自立、地域住民と関係性の改善を行い、コミュニティで安心して暮らせるように支援しています。
3年間の社会復帰プログラムの最初の1年半は衣食住の支援、基礎教育や職業訓練を行います。後半は、ビジネスを立ち上げるための機材を提供し、ビジネスを軌道にのせるためのサポートをします。PTSD(心的外傷後ストレス障害)に対する心理的、社会的支援もしています。これらを通して、現地公務員と同水準の収入を得られるようになり、近隣住民・コミュニティの中での関係性が向上していくことで、自尊心を育み、社会復帰を果たしています。現場での取り組みの内容や知見をもとに、児童労働の現状を日本の皆さんに知っていただくため、アクション・プレッジにも参加する予定です。

◆公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン アドボカシー・スペシャリスト/
教育協力NGOネットワーク(JNNE) 副代表 大野 容子 氏
教育の現状と児童労働について、お話しします。コロナの影響で、世界中の子どもたちは休校やリモート教育へのアクセスができないことから、過去1年間の平均で3分の1の学期を失いました。その日数の合計は、1120億日分に相当します。特に最も貧しい子どもたちに不均衡な悪形響が生じています。地域間格差もあり、西ヨーロッパの38日に対して、ラテンアメリカ・カリブ海地域では110日と学期の半分以上が休校となりました。
ビデオ ウガンダ15歳の少年のメッセージ 「教育がなければ自分たちの将来はない」
コロナ禍で、外的・内的な要因に加えて、安い子どもの労働力を必要とする企業が出てきて、児童労働への需要が高まっています。
学校は見守りの場でもあります。休校により学校が「見守り機能」を失うと、人身売買などのリスクの増加にもつながります。セーブ・ザ・チルドレンの調査から、1000万人の子どもが学校再開後に戻れない可能性があると警告しています。実際、シエラレオネでエボラ出血熱の後に、学校に戻るようにと言う親はほとんどいなかったと現地から報告がありました。
モンゴルでは、5〜17歳の1割となる5万6000人が児童労働に従事しています。大半が農牧畜業なのですが、競馬の騎手として、馬主が体重の軽い子どもを雇い参加させる、もしくは貧困家庭の親が賞金を目当てに子どもをレースに出すということがあります。これは、転落や怪我などの大きなリスクがあり、障害や後遺症が残るケースが出ています。児童労働のひとつです。
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、モンゴルで少数民族や障害のある子ども、児童労働により教育の機会を失った子どもに対して、公立学校に行けるように、インクルーシブ教育推進事業を行っています。すべての子どもが教育を受ける権利があるという、全国規模で啓発キャンペーンを行っています。
子どもは教育を受ける権利があります。子どもの教育や健康的な成長を妨げる児童労働は撤廃すべきです。極度の貧困状態で、子どもたちが自分自身とその家族のために、少なくとも基本的な収入を得る必要がある場合は、有害で危険な仕事に代わる、持続可能で安全な代替手段を提供することが重要で、代替案には、年齢に適した公的なあるいはインフォーマルな教育へのアクセスが含まれるべきだと思います。
JNNEから国会議員の方々へお願いです。コロナからの回復の努力の中心に子どもと教育を中心に位置づけること、ODAによる教育支援の拡大、子どもたちが学校に戻れるようしっかりサポートしていただきたく、お願いします。

■ステークホルダーからの報告

◆外務省総合外交政策局人権人道課長 富山 未来仁 氏
児童労働は、児童の搾取や子どもの権利の侵害につながる深刻な問題であり、SDG 8.7にありますように児童労働撤廃は国際社会が取り組むべき重要な課題であると認識しています。
外務省としては、世界各地における児童労働撤廃のために国際機関への拠出などを通して、児童労働につながる貧困、教育、子どもの保護の分野で支援をしています。2019年には、ユニセフを通じて、ヨルダンで、子どもの保護の分野で児童労働などにより搾取された子ども1000人に対して、学校への復帰や心のケアなどの支援を行いました。こういった取り組みを継続していくことが重要で、今後も国際機関や各国政府などから提案されるプロジェクトを個別に実施していきたいと思っています。
児童労働撤廃のためには企業活動において人権が尊重されることも重要です。日本政府は、昨年10月に企業活動における人権促進を図るために、「ビジネスと人権に関する行動計画」を策定しました。この中で、子どもの権利の保護促進をひとつの横断的な課題として位置付けています。政府の具体的な取り組みとしては、人身取引や性的搾取を含む児童労働撤廃に関する国際的な取り組みへの貢献や、子どもに対する暴力撲滅のためのグローバルパートナーシップ(GPeVAC)を通じた取り組みを挙げています。GPeVACに関しては、行動計画を策定中です。
「ビジネスと人権に関する行動計画」では、企業活動における人権への影響特定や情報共有、すなわち人権デューデリジェンスの手続き導入促進へ期待を表明しています。これは、児童労働撤廃の観点からも重要と考えています。
今年は児童労働撤廃国際年ですので、国際機関への拠出や「ビジネスと人権に関する行動計画」を通して、引き続き貢献していきたいと思います。

◆厚生労働省大臣官房国際課 国際企画・戦略官 平嶋 壮州 氏
昨年、ILOのすべての加盟国がILO第182号条約を批准し、ILOで初めてのユニバーサル条約となりました。児童労働は、子どもの発達や未来を奪う、あってはならないものです。コロナ禍の悪影響も出ているところです。
厚生労働省としては、国際的な児童労働撤廃に向けて、2019年度からILOのアジア地域の児童労働撲滅対策事業に拠出を行っており、SDG 8.7の実現に向けて貢献していきたいと考えています。
国内の対策としては、児童労働を確実に防止するために、警察との連携しながら、労働基準法や児童福祉法における禁止規定の履行に取り組むとともに、関係機関やNPO等と連携しながら、困難を抱える若者や子ども、その家族の就労・生活支援をしているところです。
厚生労働省としては、こうした取り組みについて、Alliance 8.7の事務局に対しアクション・プレッジを提出し、しっかりと取り組んでいきたいと考えています。関係する皆様のご協力よろしくお願いします。

◆日本労働組合総連合会 副事務局長 矢木 孝幸 氏
日本の約700万人の労働者が集います労働組合のナショナルセンターである連合の児童労働撲滅に向けた活動について報告します。
第1点目は、NGOとの連携です。児童労働ネットワークの運営委員として、各種活動の企画から実施に参画してきました。毎年6月12日の児童労働反対世界デーのレッドカードアクションへの参加については、加盟組織に広く呼びかけ、組合員1人1人まで周知を推進してきました。また、NGO労働組合国際共同フォーラムでも、労働事務局としてSDGsの達成に向けた取り組みを行っています。児童労働を重要な課題として活動を推進し、NGOと協働して連合の組織内外に向けた啓発活動を行っています。
第2点目は、企業のカウンターパートとしての労働組合の役割です。企業活動では、働く人の権利が守られ、ディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事ができる環境)が確保されなければなりません。児童労働の禁止を含めて、労働者の権利を保護する数々の国際ルールに沿って、企業が自らの責任を果たせているか、労働組合からも監視の目を光らせています。
ILOや国際労働組合総連合(ITUC)などの国際組織において、日本の労働者を代表して意見を反映するために意見決定の場に参画しています。国際労働財団(JILAF)とも連動し、アジアなど海外の国際労働組合関係者との相互理解を促進していきます。国や地域レベルで政策策定に参画し、児童労働撤廃の取り組みの重要性を訴えてまいります。
2021年が児童労働撤廃国際年に設定されたことを歓迎しており、これを契機に取り組みをさらに推進してまいります。加盟組織や組合員、国際組織、政府と連携し、これまでの取り組みをさらに進化発展させ、一日も早い児童労働撤廃の実現に向けて取り組みを強化していきます。どうぞよろしくお願いします。

◆グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン 事務局次長 氏家 啓一 氏
グローバル・コンパクトは国連に設立され、人権、労働、環境、腐敗防止と、SDGs推進のために企業が自主的に参加する団体です。本日は、日本の行動計画(NAP)より、「児童労働の撤廃」と「子どもの権利とビジネス原則」に着目した取り組みを報告します。
児童労働は企業が社会に与える重大な人権侵害です。「ビジネスと人権に関する指導原則」では、企業に人権尊重の責任があり、リスク予防として人権デューデリジェンスの実施が求められています。また、SDGsの国連文書では、企業は「イノベーションの発揮の期待」とともに、「ビジネスと人権に関する指導原則」、「ILOの労働基準」の順守が求められています。
リスクの例としましては、グローバル・サプライチェーンにおける児童労働があります。児童労働、強制労働、現代奴隷などの実態についてグローバル・サプライチェーンをアセスメント調査することで知ることができます。グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンでは、12年前にサプライチェーン分科会を設置して、CSR調達の啓発活動を行ってきました。企業が自発的に参加しているこの分科会の特徴は、業界を超えた協働、NGOとの交流、普及ツールの開発などを行ってきたことです。サプライチェーンの把握は、自社が間接的にリスクを助長している、リスクに結びついていることを防ぐために必須のことです。
もう一つの例は、子どもの成長特性にかかわることです。広告やマーケティングが子どもに与える影響に関し、企業は正しい情報の提供と対応が必要だと思います。こうして、セーブ・ザ・チルドレンさんと共同作成した「子どもに影響のある広告およびマーケティングに関するガイドライン」があります。
これらの事例は、正しい企業行動のきっかけとなるものです。SDGs達成の2030年までの期間がスケールアップと行動の10年となるよう、日本の「ビジネスと人権の行動計画」に沿って、日本企業が子どもを含めてあらゆる人びとの人権尊重を責任として人権デューデリジェンスを実施していくことを、政府、議員の皆様に支援とご協力をお願いしたいと思います。

◆児童労働ネットワーク 事務局/ACE 啓発・市民参加事業担当 杉山 綾香
児童労働ネットワークは、市民社会組織や労働組合17団体と個人会員4名で構成されたネットワークです。ILOが募集している「2021年アクションの誓い」を提出するために、検討してきました。児童労働ネットワークは、活動のひとつとして2008年から署名活動を行っており、累計で242万筆の署名をいただきました。その内容が、本日ご報告する「アクションの誓い」に反映されています。
<2021年アクションの誓い>
日本の主要なステークホルダーに児童労働撤廃のためのアクションを起こすように促す
<実施内容 その1>
日本政府に以下のアクションをとるように働きかけます
 ① Alliance 8.7へパートナーとして参加する
 ② ODAの中で児童労働撤廃のための資金を増やす
 ③ 児童労働の予防と撤廃のために、サプライチェーン透明化や公共調達の法整備を行う
 ④ ILO第182号条約(最悪の形態の児童労働)に則り行動計画を策定し、日本の児童労働に取り組む体制を整備する
 ⑤ 日本国内の児童労働について問題を把握し、対策を講じる
<実施内容 その2>
① 児童労働撤廃国際年を広める院内セミナーを開催する
② 6月12日の児童労働反対世界デーを中心に啓発キャンペーンを実施する
<2025年までの児童労働撤廃への貢献>
児童労働ネットワークによる活動を通じて、日本における主要重要なステークホルダー(政治家、政府職員、ビジネス、労働組合、市民社会組織など)が児童労働問題への理解を深め、SDG 8.7達成のためのアクションを強化する
<広報>
CL-Netのウェブサイト(特設サイト)とSNS発信
児童労働ネットワークとしましては、児童労働撤廃国際年をさまざまな活動を通して盛り上げ、児童労働について知っていただけるようにしていきたいと思っています。SNSのフォローなど、皆様の応援をどうぞよろしくお願いいたします。

■質疑応答

◆石橋議員から「今年度、次年度の予算の中でODA関係やILO の任意拠出における児童労働に特化もしくは間接的に関わる拠出」について、ご質問があり、「ODAの拠出では、児童労働に特化した予算が要求されている形ではないですが、各国際機関からの提案を見て個別に判断して支援していく予定」(外務省)、「児童労働に関する任意拠出として、令和3年度予算では約8600万円を計上しています。主な内容は、労働基準監督の運用体制の改善、労使間の対話の促進」(厚生労働省)という回答がありました。

◆牧島議員から「カカオ生産者はチョコレートを一生口にしないまま人生を終えることもあり、チョコレートに適正な値段を払って購入しましょうという活動をしてきました。児童労働を撤廃するというコンセプトで各企業が生産工程に含んでいるかに関する消費者の意識や消費行動の最近の傾向」についてご質問があり、「①リスクを知る、②企業の事業の中に組み込む(内部化)、③やっていることが正しいか追跡する、④その内容を社会に対話、コミュニケートする、というステップが大切。食品やアパレルなどリスクが高い産業やグローバル・サプライチェーンの事例について認知度が高くなっています。開始した活動をレベルアップしていくことが重要」(グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン)という回答がありました。

◆鈴木馨祐衆議院議員からのコメント
外務副大臣の時には提出していただいた署名を踏まえ、いろいろな形で対応いたしました。児童労働根絶に向けた気運が高まっている状況と認識しています。ミレニアル世代を含めて意識が高まり、企業においてもレピュテーション(評判)リスクが高まってきていると思います。消費者に対して、チャイルド・レーバー・フリーを「見える化」する流れを作っていくことが重要だと思います。
もう一つは、サステナブル・ファイナンスでして、自民党の財務金融部会長としてESGに関する提言の取りまとめを行っています。これまではE(環境)が先行していましたが、児童労働はS(社会)に関して可視化できる分野だと思っています。児童労働がサプライチェーンやバリューチェーンに入っていることが経営上のリスクであるという感覚が高まるということが大事です。そして、サプライチェーン、バリューチェーンの中で児童労働の有無を企業に情報開示させるという一連の流れをつくることで、児童労働根絶に向けたエコシステムができると思います。そのための好機ですので、与野党超えて行動していければと思います。

■ご参加された国会議員の方々からのメッセージ紹介

石橋 通宏 参議院議員c3d046d4bff66bef767ce73ef941f652.jpg
岸 真紀子 参議院議員9378a17caf410a5f0d8b529a3dfb46af.jpg

左藤 章 衆議院議員c3d046d4bff66bef767ce73ef941f652.jpg
鈴木 馨祐 衆議院議員9378a17caf410a5f0d8b529a3dfb46af.jpg

谷合 正明 参議院議員c3d046d4bff66bef767ce73ef941f652.jpg
寺田 静 参議院議員9378a17caf410a5f0d8b529a3dfb46af.jpg

牧島 かれん 衆議院議員c3d046d4bff66bef767ce73ef941f652.jpg
山内 康一 衆議院議員9378a17caf410a5f0d8b529a3dfb46af.jpg

<オンラインでのご参加>

川田 龍平 参議院議員
吉田 統彦 衆議院議員

■閉会あいさつ

◆児童労働ネットワーク 監事 長谷川 真一
児童労働ネットワークが設立された頃、ILO駐日事務所の代表をしていました関係で、ずっとかかわっています。
本日は、「2021年児童労働撤廃国際年ステークホルダー会議〜みんなでアクション〜」に長い時間おつきあいをいただきまして、ありがとうございました。登壇者の皆さんには、コロナ禍における児童労働の現状、問題点、現場における具体的な活動、ステークホルダーとしての活動や決意表明などをいただき、感謝申し上げます。ILO議員連盟とユニセフ議連連盟の先生方には、ご後援していただいただけでなく有益なコメントもいただきまして、たいへんありがとうございます。
コロナの制約のため参加者の方はオンライン参加となり、また時間の制約でご質問が取り上げられず、申し訳なく思っています。会場での議論の中で、参加者の方にとって何らかのご参考になればと考えています。
今年は、児童労働撤廃国際年です。6月12日が児童労働撤廃デーということで、ILO、ユニセフ、グローバル・コンパクトも、1週間「ウィーク」という形でいろいろな活動を世界で行うと聞いています。厚生労働省さんからもプレッジを提出していただけるというお話をいただきました。オンライン参加の方々を含め、それぞれの立場で児童労働をなくすためにできることをやっていく、いろいろなつながりのなかで連携して活動することをみなさんで誓い合って、閉会とさせていただきたいと思います。本日は、誠にありがとうございました。